1.1 進化心理学という科学革命に参加して
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進化心理学のシンボル的な存在
2003年から継続してISI(Institute for Scientific Society: HBES)が認定する「広く引用されている研究者(社会科学分野)」に選ばれ続けており、基礎心理学の教科書で最もよく引用されている心理学者の1人でもある(2003年では第27位)
”Evolutionary Psychology”は欧米の多くの大学で心理学の教科書として採用されている
バスの研究の関心
どのような配偶相手を選ぶかという問題は、種の繁栄と遺伝子の伝達と深く関わる、動物にとって極めて重要な問題
長い進化の道のりの中でヒトが備えるに至った配偶者選好は様々な要因に影響を受けると考えられる
配偶者を選ぶ際の戦略が様々に異なることもある
長期的なパートナーを選ぶとき、短期的なパートナーを選ぶとき、そして配偶者以外との性的関係など(Bass, 2007)といった違い このように異なる配偶戦略/状況の下では、配偶相手に対する選好、すなわち魅力を感じるポイントも異なってくる可能性があり、実際多くの実証研究が行われている
ヒトの場合、男性と女性は妊娠、授乳といった面での違いが原因となって、性的活動においても、それぞれに異なった適応課題に直面することになる
そのため、男女の配偶者選択行動には、進化によって生じた大きな違いがあると言われている
配偶者選択の際に重視する点の違い、短期的な性的関係を求める程度の違い、そして何に嫉妬を感じるかといった違い
性別間の対立
名声・地位と社会的評判、嫉妬
殺人に関する心理学、および殺人に対する心理的防御システム
Dominance and acess to women(支配性と女性の獲得)
最初の論文
男性が高い地位を得ることに強く駆り立てられるのは、女性と交際する機会が増大するからだと主張
配偶行動にちゃくもくしたのはそれが進化プロセスの原動力(繁殖成功度の個体差)と非常に近いところにあるため もし自然淘汰が、配偶行動を成功に導く適応的な心や行動を生み出してこなかったのならば、配偶からかけ離れた他の事例に対処する適応を生み出すとは考えにくいという理屈 配偶者の選り好みにおける性差の予想は実証された
進化的な仮説のより厳密な検証のためには文化比較が必要だと考えた
通文化的にこの予想が成り立つのかを検証する研究を開始
性差は文化によらず普遍的であることが証明された
1989年に“Behavioral and Brain Sciences”に発表した“Sex differences in human mate preferences: Evolutionary hypotheses tested in 37 cultures”
この時点までは進化的視点をヒトの行動に適用することに対しては、非常に懐疑的な視点が多く、論争が絶えなかった
この論文は、進化的な仮説が単なる憶測ではなく、実証的な予測を立てることができ、さらにはそれを強く支持する証拠を得られる事を示した最初の大規模な実証論文だった
この論文とそれに続く研究は賞賛と同時に批判を浴びた
今日でも攻撃は続いているが、進化心理学という分野は現時点で十分発展してきており、世界中の大学に何百人もの進化心理学者が存在する
進化心理学が心理学界で主要な理論的視点の1つになっただけではなく、心理学分野全体を統合しうる唯一のメタ理論になってきた
学生および研究者への助言と教訓
自らの情熱に従ってほしい
進化心理学という分野で研究していると、とてつもなく刺激的な時間を過ごせます。若い研究者には重要な貢献をするチャンスがあるのです
進化心理学の概念的な基盤を学んでほしい
進化心理学の基礎を築いた研究を繰り返し読んで、その概念的な枠組みを明確に理解してください。それには進化生物学と進化心理学の基礎的概念を両方理解することが必要です。一朝一夕には理解できないと心得てください。
忍耐が必要である
科学革命の最先端における研究は、得てして懐疑と抵抗に直面します。トップレベルの研究を忍耐強く続ければ、時を経て報われるでしょう。
進化心理学の未来
チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)の『種の起源』「遠い将来を見通すと、さらにはるかに重要な研究分野が開いているのが見える。心理学は新たな基盤の上に築かれることになるだろう。それは、個々の心理的能力や可能性は少しずつ必然的に獲得されたとされる基盤である」 優れた研究が心理学の各分野で蓄積されていくにつれて、進化心理学は最も有用で強力なメタ理論になる